言語聴覚士のひとりごと-STブログ-

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

短期記憶と長期記憶について【多職種向け】

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はじめに

臨床場面やカンファレンスなどにおいて、「短期記憶が悪いから…」という会話が飛び交う場面ありませんか?

 

この「短期記憶」というのは、対象者の方の何を指している用語なのか、注意する必要があります。というのも一般的な記憶障害で生じるのは「エピソード記憶」の障害であって、これは「長期記憶」になります

 

今回は、この短期記憶と長期記憶について概説したいと思います。

 

短期記憶と長期記憶の分類について

短期記憶とは、「20−30秒以内という短期間の記憶情報の保持能力」

加藤(2008)より

と定義されています。

 

例えば日常生活では、電話番号が(即時的に)覚えられない!とかが「短期記憶」の問題です。

 

(言語性)短期記憶の評価は「数唱(Digit Span)」をします。余談ですが、この評価のポイントは、「1秒間に1つの数字を呈示する」ことです。

 

呈示間隔が変わると成績が変わることは既に報告がありますので、検査をする前にストップウォッチで時間を見ながら練習しましょう!!

 

次に、長期記憶ですが、

 長期記憶には,顕在記憶と潜在記憶に分けられ る。さらに,顕在記憶はエピソード記憶意味記憶に分類される。臨床上しばしば観察されるのは, この意味記憶エピソード記憶の障害である。加藤(2008)より

  と述べています。

 

あの記憶で有名な海馬などで生じるとされる純粋健忘症候群は「エピソード記憶」の障害がメインとなり、例えば夕方に「今日は〇〇のリハビリをした、昼に〇〇を食べた」などが思い出せません。

 

検査は標準言語性対連合学習検査(S-PA)やウェクスラー記憶検査(WMS-R)などで評価します。また純粋例は数唱がむしろ良好で、短期記憶障害が出現しないのも特徴です。

 

意味記憶障害で有名なのは、意味性認知症(語義失語)ですね。

 

これは、例えば「ハサミ」はどれですか?と聞いた時に、

 

「ハサミ?ハサミってなんですか?」というように、その語自体に対して既知感がなくなります。まさに「意味が失われた障害」となりますね。

 

失語症による単語理解障害は、意味記憶自体は保存されていますが意味記憶へのアクセス障害によって生じるとされていますので、その点が違います。

 

まとめ

記憶障害はとても奥が深いのでまだまだ話はあるんですが、盛りだくさんなのでこの辺で。

 

記憶についてはSTだけでなく、他の医療従事者と話す機会も多いと思うので、短期記憶と長期記憶の理解はぜひしておきましょう!

 

「短期記憶」という用語は、多くの人が誤って使用しているので、何のことを伝えたくて「短期記憶」といっているのか、理解したうえで会話したいものです。

 

引用・参考文献

加藤元一郎.記憶とその病態:高次脳機能研究28(2):206-213,2008 より