言語聴覚士のひとりごと-STブログ-

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

失語症における個別性について

 

 

 

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今日は、失語症の方における個別性について考えてみたいと思います。

 

 

失語症は「症候群」です

  失語症とは、様々な症候が合わさって生じています。例えば、発語失行(アナルトリー)と喚語困難、構文の障害があれば「ブローカ失語」となります。この各々の症候が合わさって生じること、これを症候群と言います。私たちは、各々の症候がどの程度障害があり、逆に保たれている機能は何なのか?について評価し、対象者の方にあった訓練や支援を提供していきます。

 

個別性の重要性

 さて、では何故個別性が重要なのでしょうか?

例えばブローカ失語の人を100人集めたとします。集まったブローカ失語の方は、全員同じだと思いますか?

 

答えはNOです。ブローカ失語との診断が誤っていなければ、(共通認識としての)ブローカ失語像はかぶる部分もあると思いますが、全く同じということはありません。その理由は、病巣部位や個人の背景が異なっていることで、個々の症候の重症度が異なります。

 

例えば、

①発語失行が重篤で喚語困難が軽い患者さん

②喚語困難が重篤で発語失行が軽い患者さん

どちらもブローカ失語になりますよね?

※この2つ以外にもブローカ失語に重要な症候はあるのですが、分かりやすく例えるために省略させていただきました。

 

訓練をおこなうSTにとって①と②のかたの訓練はまったく違いますよね?これを正しく把握していることで、訓練だけでなく会話のときにどんな工夫をしたら良いか、ご家族や、病院であれば病棟の多職種の医療従事者にもに「こうすると会話しやすいですよ」などといった情報を提供できる可能性があります。

 

会話の時に、患者さんは何分かかったとしても「うまく通じた!」時にとっても嬉しそうにして下さることも多いです。それが、失語症の方が他者と積極的に会話するきっかけになるのであれば、1番の機能訓練かもしれません。支援に繋げられるよう、私たち自身が1人の対象者の方の「個別性」に気付けるようになることが大事だと思います。

 

私もまだまだ核心に気付けない時もありますので…日々精進したいと思っています。

 

まとめ

 簡単にまとめると、失語症は「症候群」なので、個々の症候が合わさった集合体として生じています。そのため、病巣部位の広さ、個々の症候の重症度、個人の背景などが異なることで様々な失語像になると思われます。失語症者の支援に携わる私たちSTは、そのことを十分に理解したうえで、失語症の方と関わる必要があると考えます。

 

自戒の意味も込めて、書いてみました。

 

おまけ

 ちなみに「個別性」に着目することは大事ですが、「◯◯失語における特徴」に着目することも大事です。例えば、ブローカ失語ウェルニッケ失語の音韻性錯語が本当に同じ症候なのか?障害機序が実は違うんじゃないか?という考え方をもった人もいると思います。もし障害機序が違うならば、訓練方法や支援の手段は違ってきますよね。私たちSTは、科学的な手法(研究)で障害メカニズムや訓練法について検討していくことも必要です。研究の視点だけでもダメですし、「個別性」だけでもダメですし、両者をうまく使いこなせるSTがこれからは重要であると考えられます。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました^_^!