言語聴覚士のひとりごとBlog

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

神経心理学的所見の書き方【学生さん向け】

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はじめに

こんばんは!今日は、これから実習に挑む学生さんや、レポートや学会発表をするであろう若手STやOT向けに、「神経心理学的所見」の書き方についてお話をしたいと思います。

 

なぜこの話をすることになったかと言うと、私のフォロワーさんのばーさん(@ststudent_2of2)が以下のツイートをしていたのを見かけました。笑 

 

 これから実習も始まるだろうし、神経心理学的評価の書き方ってそういえばしっかり習ったことなかったかも…と思いましたのでブログネタとしていただきました!笑

 

神経心理学的所見の書き方について概説しつつ、ばーさんの疑問についても私なりに考えてお答えしたいと思います。

 

参考書籍は以下の成書とし、かなり引用しました。

言語聴覚士のための臨床実習テキスト 成人編

言語聴覚士のための臨床実習テキスト 成人編

 

ST学生向けに作られた書籍で、執筆者を見てもST分野で著明な先生ばかりですので、参考になると思います。学術論文ももちろん参考にしていただきたいのですが、著者によって書き方は結構違いますので、今回はこちらを引用したいと思います。ちなみに私は実習でバイザーをやるときに使えるかな?と思って買いました笑

 

神経心理学的所見にはどのような情報を記載するのか?

神経心理学的所見:

意識レベル,知能レベル,発動性,記憶障害の程度,失行・失認の有無,コミュニケーション障害の有無(失語症高次脳機能障害・構音障害) ,重症度など

言語聴覚士のための臨床実習テキストp10)

このように定義されています。構音障害が入っていますが、これが神経心理学的所見かというと、個人的には微妙かなという気がしますが、引用なのでそのまま載せました。

 

神経心理学的所見と混同しやすいものに「神経学的所見」があります。

神経学的所見:

神経学的テストによってどの部位にどのような障害が存在するのかが判断できる。麻痺,筋緊張,反射,感覚,協調運動,視野障害の有無を確認する

言語聴覚士のための臨床実習テキストp10)

 

一般的な神経心理学的所見の書き方

ブローカ失語の場合 

神経心理学的所見:失語症(後述),アナルトリー(発語失行),口部顔面失行,右半側空間無視を認めた

言語聴覚士のための臨床実習テキストp64)

 このように、神経心理学的所見は「所見」ですので、認められた障害名がシンプルに記載されることが一般的です。このケースレポートでは、その後に言語機能についての詳細な評価はありましたが、言語以外についてはあまり記載がありませんでした。ただ、ここで詳しく記載する場合も十分考えられますので、それはバイザーに合わせてください。

※学術論文では、書き方によってはその根拠となる検査結果の説明を兼ねる場合もあります。この方法を一般的と捉える方もいますので、養成校の書式やバイザーに合わせましょう。

 

全失語の場合

神経心理学的所見:失語症,右半側空間無視,失行,全般性注意障害,構成障害

言語聴覚士のための臨床実習テキストp81)

全失語の場合、詳細な神経心理学的評価は困難ですので、評価項目の「高次脳機能」では以下のように記載されていました。

*注意機能:病棟生活場面での観察評価より,動作性急さあり。食事中にきょろきょろあたりを見回すなど全般的な注意障害あり。

*行為:身体動作の模倣(おじぎやOKサインなど)に対し無反応または拙劣。口唇・舌の模倣運動が拙劣。ブラシをもたせてもとかすことができない。以上により観念運動失行,口腔顔面失行,観念失行を認める

*構成:キツネなど手指の構成困難。写字や立方体など図形模写不可。

*記憶:担当訓練士の顔,トイレや病室の場所,課題実施手順を覚えることができる。観察上記憶機能は保持されていると判断した。

 (言語聴覚士のための臨床実習テキストp83) 

 このように記載がありました。たぶん、皆さんはこういう情報が欲しかったのではないでしょうか?笑 あまりこれに引っ張られて過ぎても困りますが、とてもイメージしやすくまとまった文章です。

 

おそらく実習中のレポートでは、もう少し詳しく書くことを求められますし、臨床でももっと細かく評価します。例えば、拙劣とはどのように拙劣だったのか?手指の構成がどのように困難だったのかなど、細かく記載することを求められることが多いかもしれませんね。 

神経心理学的所見のまとめ方の疑問について(私の回答)

さて、ここまでが一般的な神経心理学的所見のまとめ方についてです。ここからは「ばーさん(@ststudent_2of2)」の疑問にお答えしたいと思います。ここで悩むこと、学生さんなら多いのではないでしょうか?

 

Q:記憶は色んな分類の仕方があるけど、どういう分類で評価したらよいんだ?エピソード記憶、短期記憶と大きなくくりで良いのか、それとも…

A:基本的には「記憶」でまとめてもらえたら十分と思います。

 

記載例(結果は私が適当にいれました笑):

記憶について、数唱を実施した結果、順唱で6桁であったことから、言語性短期記憶は良好であった。WMS-Rを実施した結果、言語性記憶が60,視覚性記憶が65,一般的記憶が62であった.また日常生活においても記銘力障害が顕著で,リハビリ時間などの約束を守ることに加え,病後に出会った人物(主治医やリハスタッフ)の認識も困難であった.以上より,重度のエピソード記憶障害と判断した。

 

お恥ずかしながら、引用せずに私が考えてみました。変な日本語もあるかもしれませんが…笑 今回は評価結果→解釈としましたが、順番は色々あると思いますので、それもバイザーに合わせてください(笑)

 

Q:知能も、動作性とか言語性とか非言語性とか習ったけど、どういう基準で記載すれば良いんだろう…。

A:これは、検査を実施していない場合は詳細にはわかりませんので、実施していればWAIS-Ⅲ(最近はⅣがでましたね)などの結果を書いてください。簡易的な非言語性の知能検査にはレーヴン色彩マトリックス検査やコース立方体組み合わせ検査がありますので、そちらも参考値としては有用だと思います。

 

重度失語例で検査が実施できなかった方の記載例:

重度の失語症により課題の理解が不十分で,加えて上述の右半側空間無視や構成障害の影響により,評価バッテリーは施行し得なかった.ただ入院生活では,状況に応じたナースコールの活用も可能であったなどの様子から,ある程度保たれていた可能性がある.

 

これは、私が以前サマリーを書いた時の文章をちょっと変えました笑。検査が実施できないほど重度例の場合、おそらくこれくらいしか言えないんじゃないかと思います。個々の患者さんによって違うので、生活場面の様子をよく観察してみましょう!

 

おわりに

いやー、長くなってしまいましたね。笑

私の時代は、先輩のサマリーや論文を参考にしていましたが、今の実習生にとって「言語聴覚士のための臨床実習テキスト」はかなり参考になりますね!

 

これから実習にはいり、不安も多いかと思いますが、本来の臨床は楽しいものです。ぜひ1人1人の患者さんをよーく観察して、沢山のことを学んできてくださいね!実習で得られたことは、その後の国試や臨床に出てからも必ず活きてくると思います。応援しています^^

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!