言語聴覚士のひとりごとBlog

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

やさしい高次脳機能の診かた①-論文紹介-【多職種向け】

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はじめに

これから実習にいく学生さんや、新患さんを担当しはじめる新人さんも多いかと思います。そして認知症高次脳機能障害に関わることのある看護師さんなども、近年は多くなってきたと思います。

でも「高次脳機能障害ってわかりにくいよね」「何をしたら良いかわからない」という人もおおいかなと思います。

今回は、高次脳機能障害の患者さんをみるときに、大事なポイントについて何回かに分けてお話をしたいと思います。

今回は、すべて以下の総説論文を参考・引用しました。
大事な部分は引用して紹介しますが、ぜひ論文も読んでみたら良いと思います。

【参考・引用文献】

やさしい高次脳機能の診かた.
著者:鈴木 匡子
雑誌:神経心理学.32;224–228,2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/32/3/32_224/_pdf/-char/ja

神経心理学の分野で有名な医師の先生です。高次脳機能障害外来での診察のポイントが記載されています。

※論文を引用しているため「診察」と記載されていますが、私たちSTは診察をしているわけではありません。論文の執筆者が医師であることからそのような記載になっていることをご了承ください。

基本的な高次脳機能障害の考え方①

ここで紹介するのは、高次脳機能の「階層性」についてです。高次脳機能障害のなかには「失語症」「注意障害」「記憶障害」「遂行機能障害」など多くの用語がありますが、これらの障害には階層性(つまり難易度が違う)があることをまずは認識している必要があります。

この点について論文では、

高次脳機能には階層性があるため、基盤となる機能(全般性注意,情動など)、個々の機能(言語,記憶など),それを統合する機能(遂行機能など)の順に診察する。下位の機能がかなり障害されている場合には,それより上位の機能を細かく検討することは難しい

と記載されています。

高次脳機能において基盤となる機能に障害があると、土台となる部分が崩壊することになります。

例えば、私たちも眠たくなっている(覚醒度が低い)ときに聞いた内容って覚えてない(またはうる覚え)ことも多いですよね?これは記憶障害だからではなく、基盤となる機能の1つである意識が低下している状態が原因となっているのです。

私が経験した遂行機能障害の患者さんは、WAIS–ⅢのIQ110越えで記憶検査(WMS-R)も問題なし。ですが、前頭葉機能の障害を検出する「WCST(ウィスコンシンカード分類課題)」が全くできませんでした。このように統合する機能である遂行機能障害は、「上位の機能」を評価しているんだと、評価者は知っていないといけません。

基本的な高次脳機能障害の考え方②

次に、患者さんの協力についてです。

高次脳機能の診察は、身体的な診察よりさらに患者の協力が必要である。十分な協力が得られない場合は、問診を通して情動の状態なども診ながら、ラポールをとっていくことが大切である。

患者の疲労が強い場合には、適宜休憩を取る。神経心理学的検査をする場合にも、患者の反応速度や理解度に合わせて施行し、最大限の能力を引き出すように努める

これは高次脳機能障害に限ったことではないと思います。ただ、神経心理学的検査は患者さんにかなりの負担をかけるものだということを、私たちは認識している必要があります。その認識が患者さんとずれると、トラブルにつながりますし、患者さんに負担をかけるだけでなく評価結果から得られるものも少ないです。

患者さんから信頼を得るのは簡単ではありません。ただ、必要な検査を大変だからといってやらないのもよくないと思います。患者さんにもよりますが、私が意識していることは「なぜ検査をする必要があるのか?」を明確に提示することや、実施する時期についても調整しています。

この時に大事なのは、「主訴をしっかり聞く」ことです。

例えば、軽度の構音障害と注意障害の患者さんがいたとします。患者さんは構音障害にニーズがあるのに、STは注意や知能の障害を評価した。こういう不一致があると、患者さんから信用されませんし、仮に検査をおこなったとしても最大限の能力は引き出せません。

私もこの手の失敗は新人時代にしたことがありますが…
ぜひ神経心理学的検査を行う際には、意識してほしい点ですね。

基本的な高次脳機能障害の考え方③

最後は、病巣部位についてです。

高次脳機能の診察をする時には既に画像検査が済んでいることが多いため,病巣部位から出現しうる症状を予測して,見逃しのないように診察する.そのためには,主な症状と病巣部位の関係は知っておいた方がよい.ただし,時に側性化が異なる症例や,病巣の影響で機能局在が異なっている症例もあるので,全般的なスクリーニングは必要である.

私は回復期病棟での勤務ですので、ある程度情報が手に入る環境ということもあります。

ですが、限られた時間の中で患者さんの症状を捉えるためにも、病巣部位から症状を推測することは大事です。ただし、ありがちなのは「病巣に引っ張られすぎる」ことです。その病巣で起こりうる症状が「あるに違いない」と思ってみると、大事なサインや個別性を見逃す可能性があることも忘れてはいけません。病巣はすっごく大事です!でも参考の1つと考えるのが良いのかなと、私は整理しています。

まとめ

いかがでしたか?私が新人時代に失敗したこと、今の新人さんをみていて感じたことも含め、紹介させてもらいました。次回から、「基盤となる機能」「個々の機能」「統合する機能」のそれぞれについて触れていきたいと思います。

ただ、最初(今回)が1番大事だと思いますので、高次脳機能障害の方を担当する際には気をつけてみてくださいね^^

最後まで読んでいただきありがとうございました!

↓やさしい高次脳機能の診かた②はこちら
www.st-hitorigoto.com