言語聴覚士のひとりごとBlog

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

やさしい高次脳機能の診かた②-論文紹介-【多職種向け】

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はじめに

「やさしい高次脳機能の診かた」の2回目です。前回は基本的な高次脳機能のみかたについてでした。

 

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今回は階層性のなかで「基盤となる機能」についてご紹介させていただきます。前回同様、以下の総説論文を参考・引用した上で進めていきたいと思います。

 

【参考・引用文献】
やさしい高次脳機能の診かた.
著者:鈴木 匡子
雑誌:神経心理学.32;224–228,2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/32/3/32_224/_pdf/-char/ja

 

基盤となる機能

①全般性注意障害
問診で反応が遅い,聞き返しが多い,内容の一貫性に欠けるなどがみられる場合は,全般性注意障害を疑う 

 これはもう説明不要ですね^^このような状態の場合、「そもそも情報が入りにくい」ので、当然、神経心理学的検査を実施したとしても信頼できる結果にはならないですね。

 

◯評価する方法

 

1)見当識

自分がいる時間,場所,周囲 の人などについて認識しているかどうかをみる.

注意事項もあるようです。

ただし,健忘があると日付や病院の名前を記憶できないために,正答 できない.また,言語による質問となるため,言語障害があると,理解が不十分だったり,言葉を想起できなかったりする場合がある.

この場合は,全般性注意障害とは区別しないといけませんね。

 

2)順唱、タッピングスパン

順唱は,診察者が数字を1 秒に1 つずつ抑揚をつけずに言って,直後に繰り返してもらう課題である. 

この「1秒に1つ」というのが大事です。呈示する間隔が変わってしまうと結果が良くなったり悪くなったりすることが知られていますので、必ず練習してから実施しましょう。

タッピングスパンは,不規則に 配置した四角,または枡目を診察者が1 秒に1 個触れ,直後に同じ順番で指さしてもらう課題である.

この課題も「1秒に1個」というのがポイントです。理由は順唱と同様なので省略しますね。

 

結果の解釈については、

言語の障害がある場合は順唱のみが低下することがある.順唱,タッピングスパン共に低下している場合は全般性注意障害と考えられる. 

このように考えると整理しやすいですね。順唱・タッピングスパンはCAT(標準注意検査法)に入っていますので、健常者データと照らし合わせると良いと思います。 

 

3)100-7課題

100から7つずつ暗算で引いていく課題で,スクリーニング検査でもよく使われている.

この課題はよく臨床で実施されますね。解釈については、

もともと計算が苦手な人や,失算がある場合も低下するので,暗算ができない場合には,筆算ならできるかどうかを確認しておく.全般性注意低下だけの場合は,筆算は保たれる.

いやーできなかった…!だけではなく、この課題が出来なかった原因を探るのが重要だということがよく分かりますね^^

 

②情動の障害
多幸的,児戯的,興奮など活動性が高まっている状態,アパシー,無関心,うつ状態など活動性 が低い状態がある.また情動のコントロールが悪く,急に怒ったり,泣いたりというように情動不安定な場合もある.

このような症状のある患者さんは、課題に集中できる状態ではないことも多いので、神経心理学的検査を実施すべきかどうか、慎重に考えた方が良いかもしれないですね。

 

まとめ

今回は「基盤となる機能」について紹介しました。これは高次脳機能をみるうえで、もっとも基本的な機能であり、この段階での障害がある場合には、上位の機能を詳細に検討することは難しいと著者の鈴木先生も強調されています。

 

若手セラピストは、不安感から数値になる神経心理学的検査を必要以上に実施してしまい、患者さんからクレームがくるなんていうことも臨床現場ではしばしば見受けられます。検査結果として証明したい気持ちはわからなくないですが…笑

 

検査をするなと言っているわけではなく、必要な検査を吟味することで実施する検査はなるべく少なくなり、患者さんの負担を軽減しつつ訓練や支援に使う時間を確保することが出来ます。

 

その意味でも、階層性の観点から考えて評価できるようになってくると、時期に応じた適切な評価をおこなう第一歩になるのかなと、私自身は感じています。

 

では次回は「個々の高次脳機能」についてです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!