言語聴覚士のひとりごとBlog

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

やさしい高次脳機能の診かた③-論文紹介-【多職種向け】

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はじめに

さあ、第3回目になります。1回目、2回目は高次脳機能障害の方と関わる上で基盤となる機能についてでした。今回は、いよいよ「個々の高次脳機能」について触れたいと思います。

 

↓1回目、2回目はこちら

 

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今回も、以下の論文を参考・引用しています。論文のなかでは様々な個々の高次脳機能について触れていますが、当ブログでは文字数の都合上「言語」と「記憶」のみ紹介させていただきます。なるべく解釈がずれないように…とは思っていますが、ぜひ論文も実際に読んでみてくださいね!

 

【参考・引用文献】

やさしい高次脳機能の診かた.
著者:鈴木 匡子
雑誌:神経心理学.32;224–228,2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/32/3/32_224/_pdf/-char/ja

 

個々の高次脳機能

①言語

自発話,聴覚性理解,呼称,復唱,読み,書きの能力をみる.問診と MMSE でスクリーニング 可能である.

言語は本当に難しいですよね。色んな機能が複雑に混ざっているので…近年、認知神経心理学的な考え方が定着してきていますが、おそらく学生さんや新人さんが理解するまでには、結構時間がかかるんじゃないかな?と思います。論文では、1つ1つについて触れられているのですが、ここでは割愛しますね。

 

MMSEは、問診の時点で明らかに失語症のある場合には信頼性がないので、その場合は認知機能のスクリーニングを他の検査(レーヴン、コース立方体など)で評価して、言語機能についてはSLTAやWAB失語症検査をおこなうのが良いのかなと思います。

 

もう一点、とても大事なことがあります。

自発話では,流暢性,喚語困難の程度を観察する.流暢性は,構音の歪み,発話の努力性,発話量,文の長さなどいくつかの要素を含む概念とされるが,明確な基準はない.

流暢/非流暢については、STなら1度は悩んだことがあるかもしれませんね。私自身も、新人の時にずいぶんと悩まされたものです。

 

流暢/非流暢については定義が曖昧であることから、色んな議論があります。大事なのはなぜ「流暢」または「非流暢」となるのかだと思います。

 

例えば、「失構音」の場合と「文構成の障害」はどちらも「非流暢」となり得る症状ですが、「非流暢」と言ってしまえばひとくくりになってしまいます。そこで終わっては訓練ができないですよね?なぜ「非流暢」になっているのか、どうしたら少しでもスムーズに話せるのかを探るのがSTの仕事だと思います。

 

余談ですが、日本神経心理学会の学術誌「神経心理学」では、学会のシンポジウム「流暢性の失語症学」として特集が組まれています。非常に面白い内容となっていますので、興味のある方は読んでみてください。

神経心理学

 

②記憶

出来事記憶の障害を健忘と呼ぶ.記銘させてから,他の課題を行い,その間刺激内容を把持させ た後に想起させる.

出来事記憶はエピソード記憶とも言い「長期記憶」に分類されます。この課題は、MMSEでいう即時再生(記銘)・遅延再生(保持・想起)が該当します。また標準言語性対連合学習検査(S-PA)が簡便にかつ詳細な評価が可能です。

 

また、遅延再生の際に再生できなかった場合には、再認を確認するのが良いと言われています。

想起できない場合には,選択肢を与えて正 しいものを選べるか(再認)を検討しておく.再認ができれば,想起できなくても把持されていた ことが分かる. 

 このように評価することで、「記憶が悪い!」だけでなく把持できているのに再生できないのか、把持自体が出来ていないのかがわかりますね。病巣部位によって再認も出来ないタイプ(海馬損傷など)と再認が可能なタイプ(前脳基底部)に分かれてきますので、これも見分けるために重要なポイントとなります。

 

ちなみに、短期記憶と長期記憶の違いは以前ブログで書いたことがあるのでよかったら参考にしてください。しつこいですが、医師も含めてこの違いを知らない医療職は本当に多いですので…以下の内容を参考にしてください。

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まとめ

いかがでしたか?高次脳機能のなかでも中核となる「言語」と「記憶」について簡単に紹介させてもらいました。実際の論文には、もっと詳しく書いてありますので、ぜひ参考にしてくださいね^^

 

次回は最後になりますが「統合する機能」について紹介させていただきます。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!