言語聴覚士のひとりごとBlog

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

標準失語症検査(SLTA)の解釈について③-表出面-

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さて、今回で最後になります^^

 

今回は、「表出面」について書きました。この部分はSTが失語症臨床をおこなう上での醍醐味かもしれませんね^^わかってくると、臨床が楽しくなること間違いなしです^^

 

↓前回までの記事はこちら

www.st-hitorigoto.com

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a)呼称を中心に

 呼称とは、「絵」をみて名前をいう課題です。なんでこれが大事なの?会話と違うじゃん!と思う方もおおいかもしれません。それは一理あって、もちろん1番大事なのは会話での発話能力を向上することです。

 

ただ、言語の表出はとっても複雑な処理過程で構成されており、簡単にはいきません。

 

そこで呼称課題をおこない、

 

「◯◯さんはどの処理過程の障害が中核なんだろう??」

 

ということを推測することが重要になります。

 

この点について小嶋先生は

・もちろん、呼称が言語表出のすべてではありませんが、絵を見て名称を言う能力は、失語症の重症度の少なくとも1つの指標になり得る

・少なくとも現在の失語症セラピーの領域では、呼称能力を改善させることが言語表出訓練の中核となっていることが分かる

・ですから、呼称の成績をみて「これくらいは話せるんだな」とあたりをつけることは重要                   (p57)

 このように述べられています。

 

もちろん会話では単語をいうのではなく「文」ではなすので、呼称に障害がない場合には文レベルでの発話訓練が必要になると思います。

 

呼称課題は障害メカニズムの推定という意味で、大きな役割を果たしているのかなと思います。

 

b)呼称と復唱、呼称と音読の比較

呼称と復唱の比較

呼称と復唱の差を比較した時に最も多いのが、呼称は不良だが復唱は良好といったパターンかなと思います。

その際に考えるべき点については、

・呼称とは、対象物をみて、それに対応する語彙を自ら想起して、さらに音韻を選択・配列し、構音までもっていく処理過程

・それに対して、復唱というのは音韻を与えられてそれを再生するだけの処理ですから、いくら復唱だけを繰り返しても、一番肝心の意味から語彙へというencodingの処理を促進することにはならない 

                            (p57-58)

 この記載は、訓練をおこなううえで非常に大事な視点ですね。その訓練をおこなう上で、次の「呼称と音読」の比較が大事です。

 

呼称と音読の比較

・もし呼称に比べて音読が良好な場合、呼称できないときに音を与えて復唱させるのではなく、文字を呈示して音読を促すと言う訓練方法が考えられる。

 

・特に仮名単語の音読よりも漢字単語の音読のほうが呼称訓練として効果的。

⇨絵をみて呼称するという情報処理と共通点が多いため

                             (p58)

 

仮名単語は「1つ1つの文字を音韻に変換する」過程があるため、自ら語彙や音を喚起(思い浮かべる)せずとも表出に繋げることができる(p58より)ので、「自ら」語や音を喚起するという視点からいくと簡単な課題になります。

 

その点から、漢字単語の音読は呼称に近い処理過程と考えられています。

 

c)呼称と書字(書称)の比較

・呼称は出来ない単語でも書称できることがある。特に仮名単語は書けなくとも漢字で書ける場合が多い。

・宇野(1987)は、「絵を見る→漢字で書称する→自分で書いた文字を音読する」という経路で、呼称に至る迂回ルートを開発するという訓練法を提唱しており、書称が多少なりとも可能であれば、その点をまず強化していくことがよいと考えられる

                      (p58-59より一部改変) 

 

呼称障害が重度でも漢字かける患者さん、結構いますよね^^

 

書字を活用することは、もちろん機能訓練でも大事ですが、ノートと鉛筆を用いて会話をすることで、患者さんとセラピスト、または患者さんとご家族での会話内容が蓄積されていくので、私はよくやっています。

 

喚語の機能訓練にもなりますし、患者さんの伝えたい内容を把握したり「伝わった!」という成功の体験をしていただくことで、コミュニケーションの幅が広がるだろうと思っています。

 

おわりに

がっつり小嶋先生の書籍を引用させてもらいましたので、読んだことのある方にとっては退屈だったかもしれませんね(笑)

 

でも、時々振り返ることで、なんのためにこの訓練をしていたんだろう…と反省することがあります。ぜひ、復習するきっかけとしてご活用いただけたらと思います!

 

これだけみても、SLTAって色んなものをみていることがわかりますね!

 

改めて協調したいのは、私のブログはあくまで勉強するきっかけです。これだけ分かっていれば良い!というものではありませんので、ご注意ください。詳しく勉強する場合は、私が引用した書籍をはじめ、文献や書籍にあたってみてくださいね^^

 

そして参考書籍や論文をみながら、実際に患者さんのSLTAの結果を見て考えてみてください。いままで見えなかったことに気付くと、それに対して訓練が変わったり、新たな疑問もでてくるかもしれませんね。

 

それは患者さんの支援につながることだと思うので、ぜひ考えてみてくださいね!

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!