言語聴覚士のひとりごと-STブログ-

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

失語症のある方に対する神経心理学的検査の実施について【学生・新人さん向け】

 

はじめに

 

こんばんは!

言語聴覚士のひとりごとです。

 

最近はpeingという匿名で質問を受けるサービスがあり、その内容について「皆さんに知ってもらいたい!」と思った内容についてはブログで更新しようと思っています。

 

今回は以下の質問を受けました。

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これ、きっと皆さん養成校や実習などで習うかと思うんですが、案外ちゃんと説明されたことってないかも!と思いました。

 

今回は、MMSEだけでなく失語症のある方の神経心理学的検査の考え方について書いていきたいと思います。

 

参考文献

高次脳機能障害ー検査の進め方

著者:前島伸一郎,大沢愛子,宮崎泰広

高次脳機能研究30(2),299-307,2010

 

今回はこの文献を参考にしました。高次脳機能研究は、学会でのシンポジウムやセミナーの内容も論文化しているので便利ですよ^^

 

フリーでダウンロード可能です。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/30/2/30_2_299/_pdf

 

神経心理学的検査の目的

1.病巣部位の推定や病態を把握すること

2.日常生活場面での問題点や社会生活を遂行する上での注意点を明らかにすることが出来る 

3.さらに,予後の推定や回復過程の評価,訓練効果の判定などにも用いることも出来る

 上記は論文から抜粋して引用しました。

 

全部大事なんですが、神経心理学的検査の結果はあくまで「日常生活でどんな問題があるのか」という視点で実施することが必須です。

 

あら探しで「◯◯障害はないのか?」といって何でもかんでも検査をおこなうのは絶対にダメですし、患者さんに負担をかけてしまいます。

 

論文でも同様の内容が述べられています。

神経心理学的検査には患者の協力が不可欠であり,興味本位で「何かの障害を見つけ出してやろう」という態度は論外である。患者や家族との関わりの中で,「なんとか意思疎通を図りたい」「生活上で何か問題はないだろうか?」「職場で困ることはないか?」などということを一緒に明らかにし,その問題について対応していきたいと前向きな姿勢が大切である(石合 2001)

          前島(2010)より引用

 

失語症のある方に対する神経心理学的検査について

「成人の失語症とは,大脳の言語中枢の器質的損傷(脳血管障害,外傷,腫瘍など)による後天性の言語障害を指す。」 小嶋 2015 より

 皆さんご存知の通り、失語症はこのように定義されています。

 

つまり、神経心理学的検査をおこなう際に「失語症」の影響を大きく受けることが想像されます。

 

神経心理学的検査をおこなった時に「日常生活でどんな問題が起こりうるか」を推定することを目的に検査をおこないます。

 

この時に、MMSEを含む多くの検査は質問形式が「言語」を使うことになるのがポイントです。

 

例えば失語症のある方にMMSEを実施したら9点だった方がいたとします。この場合に、低下の原因が失語症の影響なのか?それとも違う認知機能障害の影響なのか?を考えなくてはいけませんよね。

 

 つまり、結局実施したとしても「何が原因で低下していたのか」がわからない状態になってしまいますよね。これではせっかく患者さんにがんばって検査をしていただいても、訓練なり支援には結びつかないと思います。

 

これが、失語症の方にMMSEを実施してはいけない理由です。

 

それに加えて、トレイルメーキングテスト(TMT)は注意機能検査として最も一般的な検査ですが、数字の処理や仮名の処理は失語症で障害されやすいので基本的には用いません。

 

じゃあ、失語症の患者さんには何をすればよいの!?と思いますよね。笑

 

その回答として論文では以下のように紹介されています。

 失語症患者の残存能力を評価するためには言語を介さない検査を用いる.「ウェクスラー成人知能検査:WAIS」や「レーヴン色彩マトリックス検査:RCPM」、「ベントン視覚記銘検査:BVRT」などの非言語性検査は失語症があっても比較的容易に施行出来る

 

ただし重度の理解障害によって教示を理解できない場合には検査の実施はまだ難しい場合もあります。

 

その時には、生活場面の観察から推測するしかないこともありますので、高次脳機能障害の評価や介入の際には、ぜひ検査場面だけでなく日常場面の観察やご家族とコミュニケーションを取ることもリハ職は大事ですよ!

 

神経心理学的検査を実施するST以外の方へ【お願い】

最後にちょっとだけ…

 

神経心理学的検査はまったくもってSTの専売特許ではありません。医師、心理士さん、OTさんなどで神経心理学的検査の評価や解釈が得意な方も多いと思います。

 

臨床現場ではSTを含んだ多職種で連携をとっていくことになると思いますし、私も普段の臨床でそのようにしています。

 

ただ「失語症のある方」に実施する際には、STに一声かけていただけると、患者さんへの負担が少ない評価バッテリーの選定や教示の仕方の工夫など、お役に立てることも多いかもしれません。

 

もちろんその点をご理解いただいている他職種の方も私は知っていますし、本当にすばらしい臨床家ですので何も言うことはありませんが、特に初学者の方には留意していただけますと幸いです。

 

おわりに

いかがでしたか?

 

疑問点やリクエストなどがありましたら、気軽に私のTwitter@st_hitorigoto)までご一報いただけたらと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!