言語聴覚士のひとりごとBlog

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

感情失禁について【多職種向け】

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はじめに

Twitterで時折話題になるのが「感情失禁」ですね。こんなツイートをみかけたのです。

 

 

嬉しくて泣いている場面で「感情失禁」と言われたらどう思いますか?

 

医師や看護師、リハ職でも泣いていれば全て「感情失禁」と表現している方を見かけます。本当に良くない…

 

感情失禁についてちゃんと習った方は少ないのかもしれませんね。授業でも、サラッと習ったような気がします。

 

個人的には、「短期記憶」と同じくらい(いや、それ以上!?笑)誤って使用している人が多い印象です。

↓短期記憶についてはこちらで解説しています。

www.st-hitorigoto.com

 

 というわけで、感情失禁について簡単に整理したいと思います。

 

感情失禁について

引用:山鳥重 神経心理学入門(1985)

神経心理学入門

神経心理学入門

 

発刊は古いですが、日本で神経心理学の考え方を広めたのは山鳥先生だといっても過言ではありません。論文でよく出てくる先生方が、この本がすり切れるほど読んだと言っているのを何回も聞いています。

 

情動不安定

感情変化が不安定で外界刺激に簡単に泣いたり笑ったりする。

 

情動失禁(感情失禁)

情動不安定が、程度の強い抑制の聞かない場合は、情動失禁とも呼ばれる

 

強迫泣きと笑い

笑いや泣きは状況にそぐわず、また一旦このような情動運動が開始されると容易に止められない。情動失禁の場合は理由があり感情を伴うが、強迫症状の場合は必ずしも了解できず、また本人も表情にふさわしい感情変化を経験しない

 

感情失禁に関する用語として、この辺りが記載されています。

 

誘発する刺激(外界刺激)があるのかないのかで、用語が変わるというのは覚えておくと良いですね。

 

さて、ここで注目するのは、情動不安定で「外界刺激に簡単に泣いたり笑ったりする」という点です。

 

ちょっと定義が曖昧なので、線引きが難しいかもしれませんね。ただ、本当に嬉しかったことや悲しかった出来事があって泣いた場合に「感情失禁」と呼ぶのは間違いなく誤りです。

 

映画をみて感動した時に泣いたとします。これを「感情失禁だ」とは言わないですよね?

 

脳卒中などを発症してから初期の方は障害を受け入れられずに、不安定になるのはよくあることです。その時に寄り添って前に進んでいくはずの医療職が、「これは感情失禁ですね」とラベルをつけることに何の意味があるのかと思ってしまいます。

 

関わっている中で、病的な反応と捉えた方が良い場合は「感情失禁(または強迫泣き)」と評価することもあります。ただ慎重に判断する必要があり、多くはこの用語を使う必要性がないことが多いです。

 

ネットで調べていると、このようなブログがありました。だいたい同じことをおっしゃってくださっているかと思いますので、参考にしてください。

それは「感情失禁」なのか? | クリニックちえのわ

 

おわりに

どんな症候も適切な評価が必要です。

 

「ただ泣いているから感情失禁」といった短絡的な考えではなく、その方の主訴や社会的・心理的背景を考慮したうえで関われるようになりたいものですね。

 

自戒の意味を込めて、ブログとして書きました。

 

余談:用語の使い方について

最後に、私の質問箱で用語の使い方について考えさせられる質問をいただきましたので紹介します。

 

おそらく、「内言語」という用語を正しく理解していないことが推測されます。

 

このように、同じ用語でも人によって使い方が誤っている場合があるので、聞く側もその点は注意しないといけないと、改めて感じました。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!