言語聴覚士のひとりごと-STブログ-

「学生さんや新人さんが理解しやすいように」を目標に、失語症・高次脳機能障害やST業務、書籍や文献の紹介など書いていきます。

失語症の古典分類とその意義についての私見

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はじめに

今回は、このようなご質問をいただきました。

 

近年、失語症の古典分類に関しては臨床家の中でも議論があります。

 

つまり、タイプ分類をする必要があるのか?

 

という疑問がわくのは自然なことかもしれませんね。

 

この点について私の考えを先に言うと「どの古典分類に当てはまるかで悩んで訓練ができないくらいなら、まずは障害メカニズムを考えよう」です。

 

ただ、古典分類を全く知らなくて良いとは思っていなくて、基本は押さえておいた方が良いと考えています。

 

以下に、障害メカニズムとタイプ分類の考え方について、簡単にですが私見をお話ししたいと思います。

 

失語症の障害メカニズムについて

失語症の障害メカニズムについて、近年は認知神経心理学の考え方が浸透してきており、ロゴジェンモデルを基に障害メカニズムを推定しています。

 

日本では小嶋先生のモデルが有名で、初学者にもわかりやすい構成になっていますね。

 

失語症の患者さんに出会った時には、まず「背景にある障害メカニズムは何なのか?」が重要になり、それをもとに訓練を立案するので、まずは評価をします。

 

例えば言葉の理解ができない患者さんであれば「なぜ理解できないのか?」を考える必要があります。

 

単語の聴覚的理解過程には「語音認知」→「聴覚入力辞書」→「意味システム」といった流れがあります。(小嶋モデルでは、聴覚入力辞書は入力音韻辞書と入力語彙辞書の2段階にわかれていますね)

 

このうち、どの部分に障害があったとしても「言葉が理解できない」ということになります。ただ、仮に「語音認知」だけの障害が重篤であれば(語音聾といいます)、おそらく文字を提示すれば理解できますよね?

 

このように、障害されているのはどの過程なのかを把握することが重要で、その見極めをおこない、そして障害メカニズムと患者さんの環境や個人因子などをもとに、訓練プログラムを立案し、実施していくことが重要です。

 

障害メカニズムについては、過去のブログで基本的な考え方を勉強できる書籍を紹介していますので、ご参照ください。

www.st-hitorigoto.com

 

では、タイプ分類って何のためにするの?

タイプ分類って養成校では確実に習いますし、特徴の羅列のような感じで覚えていることが多いですよね?私もそうでした。

 

でも、臨床に出ると「あれ、奇麗なブローカ失語なんていないぞ!?」と思った経験ありませんか?

 

臨床では、そんな典型的な◯◯失語というのはむしろ稀で、対象の方によって全然症状が違いますよね。

 

じゃあ、古典分類なんて覚えなくて良いじゃないか!と思うかもしれませんが、私はそうは思いません。ST同士や医師などの多職種で情報を共有する時に、「◯◯失語の患者さん」というのとある程度イメージできますが、「◯◯障害があって、△△障害はない、また××っていう特徴がある」みたいなことを言われても、なんだかイメージしにくいですよね。

 

だったら「中等度のブローカ失語で発語失行が特に発話障害に影響してる」と言えば、ある程度のイメージが伝わりますよね。

 

例えば、ブローカ失語の特徴には、①発語失行、②喚語困難、③文法障害、④(構文)理解障害、⑤書字は仮名の方が障害 などが挙がるでしょうか。

 

これらの症状は患者さんによって重症度がまったく異なるので、訓練をおこなう上では、その違いを考えていくことが重要と考えます。

 

でも、これらが揃っていれば間違いなく「ブローカ失語」ですので、一言で表現できるというメリットもあります。

 

過去に、もっと詳しく書いたことがあるので興味のある方は読んでみてください。

www.st-hitorigoto.com

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まとめ

典型的な古典分類にあてはまる失語症の方は、むしろ少ないかもしれません。

 

ただ私たちSTは訓練を進めるのも大事ですが、特徴を多職種で共有することや簡潔に他者に伝えることも大事です。

 

そのような観点からも、訓練できなくなるくらい悩む必要はないですが、基本的なタイプ分類くらいは出来た方が良いだろう、ということが私の考えです。

 

また古典分類に当てはまらないなら、何が典型例と違うのかを説明できるのも大事だと思います(訓練を進める、という意味では必須ではないですが)。

 

100(絶対必要)か0(そんなもんいらん)ではなく、状況や話す相手に合わせて、上手に活用できるようになると良いのかもしれませんね!

 

みなさんは、どのように考えていますか??

最後まで読んでいただきありがとうございました〜!